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禁断兄妹

第58章 嵐の夜


「修斗‥‥お願いがあるの」


「聞かない。出る用意をすると言ったはずだ」


強張った声

電話が誰からかかってきたのか
私が何を言おうとしてるのか
修斗は気づいている。


「お願い、時間を頂戴。一時間だけ下で待っていて」


「俺を追い出してここに誰を呼ぶ気ですか」


「柊君がもうすぐここに来るの」


思いきって本当のことを言った。


「お願い、少しだけ下で待っていて。彼と話をし終えたら、荷物を持って必ず車に乗るから」


「この状況でよくそんなことが言えますね‥‥」


明らかに怒りの色を帯びた声が
闇を震わせる。


「彼が私に話したいことがあると言ってるの。声がいつもと違うの。優しいの。もしかしたら、もしかするかも知れないの」


無言のまま一歩踏み出した修斗
壁を叩くように照明のスイッチを入れた。


「‥‥っ」


一瞬で明るくなった室内に痛いほど目が眩み
顔を伏せ両手で覆った。


「いい加減に目を覚ませ‥‥もしかしたら、何なんだ?!告白されるとでも?ありえない。正気か?!」


軽蔑しきった冷たい声が
少しずつ大きくなっていく。


「別れ話をしに来るだけだ、何故わからない?!」


「私は彼女でも何でもない、わざわざ別れ話をしに来る必要がないわ」


「セフレにしてた女がヤクザの娘と知って、びびって手切れ金でも持ってくるんだろうが!」

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