禁断兄妹
第59章 嵐の夜②
ゆっくりと部屋に入ってきた柊君
いつもならベッドに寄りかかるようにラグの上に腰を下ろすのに
部屋に足を踏み入れると立ち止まった。
「飲み物はビールでいい?あ、寒いから暖かいものがいいかな。お腹は空いてる?簡単なもので良ければ、何か作ろっか」
じんと熱い目の奥
火照った頬
冷蔵庫を覗きこみながら頭と口が繋がらなくて
言葉だけが空回りする。
「何もいらない。ただお前と話をしたくて来たんだ」
落ち着いた声に緊張が混じっているのを感じて
胸がざわめく。
「えー?何かな。‥‥あ、ホットワインとかは?」
「由奈。聞いて欲しい」
「‥‥うん」
壊れそうな心臓
柊君の前に立ったけれどやっぱり顔が上げられなくて
「‥‥見てこのペディキュア、可愛いでしょう?」
どうでもいいことを言ってしまう。
「由奈」
「うん‥‥?」
「俺、彼女が出来たんだ。だから、さよならを言いに来た」