禁断兄妹
第59章 嵐の夜②
どうしてその名前を
黙ったままの顔がそう言っている。
「柊君ね‥‥寝言で呼んだのよ、モエって。星の王子さまの話をした日があったよね‥‥あの時」
柊君はその澄んだ瞳でじっと私を見つめる。
私も見つめ返した。
「モエと、結ばれたのね‥‥」
「ああ。そうだよ」
温かく力強い声
凛とした眼差し
ためらわずに正直に答えてくれたことが泣きたいほど嬉しくて
そして
胸が張り裂けるほど痛い。
「モエがいれば‥‥他の女はもういらないの‥‥?」
私も
もういらないの
「ああ。もうあいつ一人だけでいい」
モエを思い浮かべたのか
柊君の真剣な表情が僅かに和らいだ。
「うん。そうだよね‥‥モエが柊君の胸に咲いてる一輪の花だって‥‥私、わかってたよ」
大丈夫
ちゃんとわかっていたの
あなたがモエのもとへ帰れるまで
その傷を癒し
慰め
そばにいたかっただけ
そんな顔しないで
少しびっくりしただけ
平気よ
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