禁断兄妹
第60章 嵐の夜③
壁際に置いてあるベッドの上まで飛ばされた身体
スプリングに大きく弾み
勢い余ってそのまま背中から床に落ちた。
全身が強く叩きつけられて息が止まる。
「ふざけた真似しやがって!このバカが‥‥っ!!」
私以上に荒い息遣いと窓を閉めカーテンを引く音が
もやのかかる頭の中
遠く聞こえる。
薄く開いた目の前
逆光の中に立ち肩で息をしながら私を見下ろす修斗
鬼のような形相
「そんなに死にたいなら手伝いますよ‥‥だが派手には死なせない。俺が会長に殺されちまう」
力の入らない両手が後ろで一つにまとめられ
あっという間に巻かれたネクタイで肌に食い込むほど強く縛り上げられる。
「痛‥‥っ!」
叫ぼうと開いた口に
丸めたハンカチが喉奥まで突っ込まれて
「ンうッ!!」
「跡形もなくきっちり埋めて、失踪したことにしてやるよ。会長は俺の言うことを疑わねえ」
身体を起こそうとする私の両足の上に修斗の両膝が乗しかかり
ぎりっと音がしそうなほど体重をかけられて
目の前に火花が飛ぶ。
痛い
潰れる
叫びたくても喉の奥に張り付いたハンカチは動かなくて
声をあげるどころかえずきむせるばかり。
息ができない
苦しい
痛い
冷然と私を見下ろす修斗に
首を振り身体を揺すり必死に訴えかけた。
「どうせ死ぬんだ。折れようが窒息しようがいいだろうが」
表情ひとつ変えず全く力を緩めない修斗。
本気で怒らせた
全身から血の気が引いていく。
「失踪だとしても、俺も指一本は覚悟しなきゃならねえ‥‥迷惑料ってことで、死ぬ前に身体で払ってもらおうか」
修斗はジャケットを脱ぎ後ろへ放り投げると
私の胸ぐらを両手で掴んでそのまま力任せに左右に引き裂いた。