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禁断兄妹

第60章 嵐の夜③


声にならない叫び声をあげながら滅茶苦茶に暴れてなりふり構わず舌を動かし
ハンカチを大量の唾液と共に強く吐き出した。

思い切り息を吸い込んで


「死にたくないっ‥‥!!!」


夢中で叫んだ。


「はあっ、やめて、死にたく、はあっ、ない、ごほっ、死にたくない、はあ‥‥‥っ」


せわしなく息を吸っては吐いて
痺れるほど呼吸困難だった全身に酸素を送る。

ズボンを下ろす手を止めた修斗
その両手をゆっくりと私の両脇について
覆い被さるように距離を詰めてくる。

狂気さえ秘めた眼差し


「飛び降りようとした奴が、今さらびびってんじゃねえよ‥‥死にてえんだろうが、ああ?!」


獲物に食らいつく寸前の
牙を伝う涎さえ見えそうな熱い息


「死にたいわけないじゃないっ‥‥だけどっ、だけ、ど──」


「だけどなんだ?!言ってみろ!!」


更に大きな怒声が間髪いれずに浴びせられて


「私にはもう何もないんだもん‥‥っ!!」


私も大声を返した。


「仕事もなくなって、柊君にはモエがいて、私にはもう‥‥っ‥‥何にも、ないからっ」


止まっていた涙が沸き上がり
目尻から溢れた。


「だから、死にたかったっ‥‥遠くへ、行きたかった‥‥っ」


ぼろぼろと零れる涙
修斗は黙ったまま
突き刺すような視線を私から離さない。


「でも、もう、死にたくない‥‥生きて、いたい‥‥っ」


涙と鼻水と唾液でぐちゃぐちゃの顔
縛られ裸まで晒して
死ぬほど情けなくて
惨めで

でもやっぱり

生きたい

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