それでも好きな人
第7章 過去と未来
初めてのお出かけ
その場所に美鈴が選んだのは
動物園でも遊園地でも水族館でもない
近場にある
大きな図書館だった
拓真「なんで図書館なの?」
美鈴「ここなら誰に見られても怪しまれ
ないでしょう?」
拓真「それはそうだけど…」
美鈴「私はこれでいいの、これで十分だ
から」
拓真「…わかった」
並んで座り
それぞれ本を読んだ
何も話さず別々の本を読んでいたが
机の下では
お互い膝を当てたまま
手を繋いでいた
美鈴「ねえ、お義兄さん」
拓真「何」
美鈴「お義兄さんはどうして教師になろ
うと思ったの?」
拓真「いきなりだね」
美鈴「ずっと気になってて…こういう時
しか聞けないから」
拓真「ん~、一番の影響は親かな」
美鈴「親?」
拓真「二人共教師だったんだ、あんまり
覚えてないけど」
美鈴「あっ…ごめんなさい…」
拓真「謝る事ないよ、正直覚えてないか
ら悲しいとか思った事ないし」
美鈴「…」