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華のしずく~あなた色に染められて~

第25章 【花屑(はなくず)~華のしずく~】

 と、寧子はハッとした。
 庭の桜の花びらが殆ど無くなっているのだ。昨夜は嵐でもなく、雨も降らなかった―。 無残にも花びらはすべて地面に散り敷いていた。
―何故―。
 寧子は茫然として、庭に落ちた花びらを見つめた。胸騒ぎがいっそう強くなった。
―秀継殿。
 寧子の瞼に弟の別れ際の笑顔が蘇った。秀継の身が案じられてならなかった。

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