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華のしずく~あなた色に染められて~

第28章 【剣(KEN)~華のしずく~】 運命の邂逅

「お前、それなのに、俺にこれが珍しい宝だと言ったのか」
 青年が初めて面を上げた。真っすぐに主に向けられた視線は、まるで獰猛な手負いの獣を思わせる。鋭くて研ぎ澄まされた光が宿っていた。
 だが、主の方も負けてはいない。長年、こんなうろんな商売をして儲けてきた海千山千の男なのだ。倅のような歳のこの若者の鋭い一瞥にもいっかな怯む風もない。
 主は小柄なでっぷりと太った身体を揺すり、ひとしきり笑った。

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