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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

「わしとて、彼の姫の話くらいは存じておる。だが、嬉々としてその話をするそなたこそが、わしには月の姫に見えるのだ」
 信成の言葉の意味を計りかね、珠々は首を振った。
「私には殿の仰せの意味が判りませぬ」
「そなたは日毎に美しうなってゆく。あまりに美しくなってゆくそなたを見ていると、何故か不安になるのだ。そなたがいつかわしを置いて、どこかへ行ってしまうのではないかと思ってしまう」
 信成は大真面目に言う。珠々は笑った。

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