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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 たとえ殺戮を嫌うとしても、平和を築くための手段としての戦もまた必要なのだと、信成は言いたいに違いなかった。そして、真の平和が訪れた時、日の本の国から戦は無くなり、血で血を洗うような生臭い闘争もなくなるだろう。
「そのような泰平の世が一日も早う訪れることを、この珠々も願うてやみませぬ」
 珠々は口先だけでなく、心底から願った。 だが、平和を祈る一方で、まだ別の不安に心は揺れていた。珠々は良人からそっと眼を逸らし、月を見上げた。

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