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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 せめて、信成の子でもいれば、彼のいない淋しさを紛らわせることができるものを、彼によく似た面差しの子を腕に抱けば、いくばくかは心慰められるものを―、そんな想いから発した言葉であった。
「どうして、私には殿のお子が授からぬのでろあろうか」
 と、少し後方にいる侍女頭の楓が控えめに言った。

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