テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第4章 【華のしずく】~試練~

 最後に、信成はそのひと言と共に、呆気ないほどの潔さで珠々に背を向けた。珠々の手のひらには、信成の形見となるひと房の髪の毛だけが確かな手触りを伴って残された。
―殿、信成様ッ!
 珠々は心の中で絶叫した。
「お方様、参りましょう」
 敵兵に再度促され、珠々は緩慢な足取りで一歩踏み出した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ