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華のしずく~あなた色に染められて~

第4章 【華のしずく】~試練~

 城を出た時、背後で轟音がとどろき、珠々は思わず振り返った。城が紅蓮の炎に包まれて、今しも焼け落ちようとしていた。眼を閉じていれば、その音は遠い雷鳴にも似ている。
 そう言えば、信成が鷹虎との戦で負った疵痕を癒すために、城内の温泉によく浸かっていた時期があった。あの頃は丁度梅雨時分で、信成と二人で温泉に入っていた珠々は、これまでになく濃密な刻を彼と過ごしたものだった。

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