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華のしずく~あなた色に染められて~

第1章 【華のしずく】~出逢い~

 珠々は眼を細めて、まだ十分に眩しさを残す初秋の陽差しを見つめた。秋とは言っても、日中はまだまだ真夏と変わらないが、花や樹々は季節のうつろいをよく知り抜いている。
 珠々の佇む川辺の少し前方に、石榴(ざくろ)の樹が大きな実をたわわに実らせていた。艶やかな紅色の実を割ると、内からは更に紅瑪瑙のような小粒の実が現れる。幼い頃から、珠々は秋になると、ここへ来て石榴の実をもいでよく口にした。

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