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華のしずく~あなた色に染められて~

第6章  雪の華~華のしずく~

「姫さま、姫さまっ」
 柏木が狼狽える声が響き渡るが、徳姫はどうしても眼を開くことができない。ただ安心した幼子のように安らかな心持ちで、柏木の腕に身を委ねた。
「姫さま―」
 柏木が安らいだ表情を浮かべた徳姫の頬をそっと撫でる。
 徳姫のすべらかな頬には幾筋もの涙の跡があった。
 柏木は複雑な顔でその涙の跡を見つめていた。

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