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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 眼の前の美しい貞心院を見ていると、やはり、我が身の至らなさが良人信晴から遠ざけられている原因なのだと思わずにはいられないのだった。生まれてからこれまで十七年間、とりたてて他人(ひと)を羨ましいと思ったり、ましてや妬んだことなどない徳姫であったが、今日初めて、自分以外の人間を羨んだ。

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