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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 そんな風にしか物事を考えられぬ自分の心根にまた、余計に嫌気を感じ、徳姫は切なくなった。たまらなくなって、涙がじんわりと湧き上がってきたが、貞心院の前で泣いてはならないと懸命に耐えた。だが、泣くまいとしても、涙はとめどなく溢れてくる。徳姫はうつむくと、唇を噛みしめた。
 小刻みにか細い肩を慄わせる徳姫を、貞心院は慈しみに満ちた眼で見つめている。
 次の瞬間、徳姫はふわりと温かな胸の中に抱きしめられていた。

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