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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 羽柴秀吉が佐竹信成を攻めることさえなければ、信成は二十四歳という若さで切腹して果てることもなかったはずだ。信晴が秀吉を父の仇として憎んでいたとしても、何の不思議もないのだ。むしろ、当然の成り行きとも言えよう。強い者が弱い者を滅ぼしてゆくのが下克上、乱世の運命(さだめ)とはいえ、人の心はそのように簡単に割り切れるものではない。
 泣き続ける徳姫の髪を、貞心院は撫で続け、徳姫が泣き止むまで根気強く待った。
 やがて、ひとしきり泣いた後、徳姫の嗚咽が止まった。

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