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華のしずく~あなた色に染められて~

第9章 【蜩(ひぐらし)~華のしずく~】

 おふうはもうずっと泣きっ放しであった。広い城の奥御殿をあてどもなくさまようこと、かれこれ一刻余り以上にもなる。これまでおはした(下女)たちの住まう局部屋から外へあまり出たことのないおふうにとって、たとえ城内といえ、城の奥廊下は途方もなく広い迷路のように感じられた。

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