華のしずく~あなた色に染められて~
第9章 【蜩(ひぐらし)~華のしずく~】
「人を探しています。楓さまと申されて、私のお仕えする千鳥さまのご主人さまで―」
言いかけると、美しいひとが眼を見開いた。「楓を探しているの」
「はい」
おふうがこっくりと頷く。美しいひとは、おふうの手を引いた。
「私と一緒にいらっしゃい」
おふうの胸が高鳴った。まるで天女のようなこの女性の手は、驚いたことに荒れていた。この手は高貴な女人には、ふさわしくはない。仕事をする女の手である。おふうの母の手もこんな風に荒れていた。
言いかけると、美しいひとが眼を見開いた。「楓を探しているの」
「はい」
おふうがこっくりと頷く。美しいひとは、おふうの手を引いた。
「私と一緒にいらっしゃい」
おふうの胸が高鳴った。まるで天女のようなこの女性の手は、驚いたことに荒れていた。この手は高貴な女人には、ふさわしくはない。仕事をする女の手である。おふうの母の手もこんな風に荒れていた。