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華のしずく~あなた色に染められて~

第9章 【蜩(ひぐらし)~華のしずく~】

 が、このひとはきらびやかな打ち掛けに小袖と、どこから見ても高貴な女性である。おふうの心を見透かすかのように、このひとが微笑んだ。
「私は一年前まで、川で洗濯をしたり、組み紐を町へ売りに出ていたのです。それゆえ、手が荒れているの」
「―申し訳ございませぬ」
 おふうが赤くなって謝ると、美しいひとが笑った。

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