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華のしずく~あなた色に染められて~

第9章 【蜩(ひぐらし)~華のしずく~】

 いつも冷静沈着な楓がまろぶようにこちらへ近寄ってくる。おふうの手を引いていたひとのたおやかな歩みがふと止まった。
「どちらへいらっしゃったのでございますか」
「探し物をしに参っていたのですよ」
 美しいひとが応え、しゃがみ込んだ。この姿勢だと、おふうと同じ視線の高さになることをよく心得ているのだ。
「そなた、名は?」
「ふうと申しまする」

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