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華のしずく~あなた色に染められて~

第16章 【夢のなか~華のしずく~】 光の祈り人

「俺を好きだというのなら、俺の妻になれば良い。どんな栄耀栄華も思いのままだぞ、簪(かんざし)だって綺麗な着物だって手に入る」
 言いながら、秀吉は言葉だけが空しく空滑りしてゆくのを感じていた。千都がそんな世俗の贅沢を望むような娘ではないことを、何より秀吉自身がよく知っている。だからこそ、千都に魅かれたのではないか。
「な、俺の妻になれ」
 千都が大きくかぶりを振る。言葉を重ねれば重ねるほど、二人の間の距離が大きくなり、千都が遠くなってゆく。

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