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華のしずく~あなた色に染められて~

第18章 【花紋~華のしずく~】 一

 桜の古樹はこの界隈でも春になれば美しく咲き誇ることで有名らしい。麗子の住まいはこの桜にちなんで〝桜の御所〟と呼ばれ、麗子自身、〝桜のおん方〟といつしか呼ばれるようになっていた。良人に疎まれ遠ざけられた女の隠れ住まいとしてはいささか似合わないほど華やかな呼ばれ方のようで、何とも皮肉なことであった。

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