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華のしずく~あなた色に染められて~

第18章 【花紋~華のしずく~】 一

 麗子は、この桜をひとめで気に入った。水辺に人知れずひそやかに咲くうす紅いろの花たちが自分自身のような気がしてならなかったのだ。花はたとえ誰に見られることがなくとも、凛として自分の花を咲かせている。そんな凛とした姿が麗子の心を打った。
 美しい桜として知られてはいても、こんな場所を訪れる人は滅多にいない。麗子は心ゆくまで花を愛で、鳥たちと戯れることができた。彼女にとって、この桜の樹の下がいちばん心安らぐところだった。

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