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華のしずく~あなた色に染められて~

第18章 【花紋~華のしずく~】 一

 この朱雀の国に自分の居場所はない。京へ帰ったからといって、けして歓迎される身ではなかったけれど、それでも、望郷の想いは押さえがたかった。
 切ない哀しみが心の奥底から押し上げてきて、麗子は両手で顔を覆った。
「何を泣いている?」
 と、唐突に背後から声が降ってきて、麗子は飛び上がらんばかりに愕いた。このような人気のない場所に一体、何者が現れたというのだろう。

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