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華のしずく~あなた色に染められて~

第19章 【花紋~華のしずく~】 二

 信斉の熱い吐息がうなじをくすぐり、耳許で囁いた。言いようのない嫌悪感がよぎり、麗子は掴まれた手を振りほどこうと夢中で抗った。
「今更、こんなこと―」
 信斉は婚礼の席にすら顔を見せず、自分は一年以上も放っておかれた飾りだけの妻にすぎないのだ。今頃になって、信斉に妻としての愛情を抱けといわれても無理なことであった。

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