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華のしずく~あなた色に染められて~

第24章 【夕桜~華のしずく~】其の参~山梔子(くちなし)の夜~

 覚悟していたとはいえ、身を切られるよりも辛い夜だった。
「この日を待ちかねたぞ」
 秀康に抱き寄せられた耳許で、熱い吐息混じりの掠れた声が囁く。
 帰蝶は唇をきつく噛みしめ、耐えた。
―たとえ身体はこの男に欲しいままにされようとも、心ばかりは好きにさせるものか。
 固い決意を持って迎えた夜なのだ。

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