Take me
第16章 16
なんで俺の運命はこんなに残酷なの?
きっとこの瞬間だけは、世界の誰より不幸だ。
隣のお兄ちゃんは、なにも言わず眉間に皺を寄せて
ただ話を聞き留めていた。
「なんで…死んじゃったの…」
「雪子は、お前を産んで死んだんだよ」
俺の呟きにお父さんが答える。
出来れば答えて欲しく無かった。
なんだよ…また俺のせいじゃん。
「雪子は元々、身体が弱くて、出産には耐え難い状態だったんだ。それで母体か胎児の命の選択を迫られた。でも、お前を無事に産んだ。それから一年後に…」
「それで…お母さんのこと殺したの、かよ…」
「俺だってなあ!できるのならば、こんな選択をしたくなかったよ!でも、雪子が選んだ事だから。仕方なかったんだ…」
俺には理解できないや
俺のお父さんは、愛する人の命を、まだ見ぬ命の為に捨てたらしい。
なんでそんな選択が出来たかって?
「お母さんが、居たからだろ…?
別に良かったんだろ…」
右頬に感じる激痛
今、会話の中にはお母さんが二人いて分かりづらい中で、お父さんは俺の言葉の意味を把握できたらしい。
「そんな訳無いだろ!!!!」
どんだけ大きな声で、強く怒鳴られたって
俺にはそう思える。