Take me
第18章 18
「あの、瑛士のお母さんですか?」
自信はあるとはいえ、人違いだった場合を予想して控えめに問う。
「そうです、瑛士の母親です。
貴方は?瑛士のお友達かしら?」
良かった、当たってた…
「はい、紘夢っていいます。」
「やっぱりお友達だったのね、なんかいつもと声が違う気がしたから」
「すいません、今瑛士出かけてて、それで反射条件っていうか…勝手に出ちゃって」
「ああ、全然!そんな謝らないで」
笑いながらそう言ってくれた。
なんか、優しいお母さんなんだなあ。
それから瑛士のお母さんは、瑛士のことについて話し始めた。
「瑛士、お友達の事とか学校の事とか全然話してくれないから…質問しても別に、ばっかりなのよ?
もしかしたら一人なんじゃないかって思ってたの。
ちゃんとお友達は居たみたいで安心したわ、瑛士と仲良くしてくれてありがとう」
前に聞いた話。
瑛士の両親は海外にいて、離れて暮らしてる。
だからこそ、可愛い一人息子の話は沢山聞きたいだろうに。
瑛士は馬鹿だな、親に心配させてさ。
「いつも喧嘩ばっかりしちゃうのよね…」
「喧嘩?ですか…」
瑛士が親と喧嘩?
なんか面白い、今頃反抗期なんだろうか。
「そう。私達は訳あって海外で暮らしてるし、やっぱり息子と離れているのはそれなりに寂しいものなのよ」
苦笑して誤魔化しているのかも知れないけど、声色は本当に寂しそうだった。
「だからね、瑛士もこっちで一緒にって何度も誘ってるんだけど…ねぇ、ふふ。あの子はそうもいかないみたい」
瑛士の事、ちゃんと愛しているんだ。
いや、これが普通なんだろうけど、自分の事もあって親がどういうものか忘れていた。
それに瑛士を置いて海外へ行ってしまうなんて、本当は瑛士の事そんなに気にしてない両親なのかな、なんて勝手に思った時もあったけど、間違っていた。
こんなに心配して、こんなに一緒に過ごしたがってる。
瑛士はどう思ってるんだろう。
「もし、良かったらなんだけど、紘夢くんからも話してみてくれないかしら?」