Take me
第5章 5
家に帰りたくない…
この気分のまま帰っても更にモヤモヤするだけだ。
俺は何も考えずにネオンを眺めながら、トボトボと一人彷徨うように歩く。
ドンッ
「ってぇ」
「あっ、すいません…ごめんなさい…」
やばい、早くここから立ち去ろう。
そう思っても行動に移させてもらえないのがお決まりなのか、案の定チャラチャラした若い男が手を掴んで来た。
「ねぇね!お兄ちゃん、結構可愛い顔してんね!
最近は男の子の買春なんてのも流行ってるんだよ…?どう?」
耳に口を近付けられ、囁くように話される。
タバコのにおい
「いや、あの…遠慮しておきます…」
早く逃げなきゃ
頭では警告音が鳴り響くのに、この足に根がはえたように動かない。
「人にぶつかっておいて?」
「や、だからその、謝った…じゃないですか…」
だんだんと小声になってしまう
俺だって男なのになんでこんな情けないかな。
お兄ちゃんならこういう時どうするんだろ…
ああ、まずこんな目に遭ったりしないか。
こんな時でも思考はお兄ちゃん
そんな自分に苦笑する。
「お兄ちゃん、こういう状況で笑ったりしない方が良いよ?」
あ…
勢い良く腕を引かれる