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寡黙男子

第2章 はじめの一歩から *学の世界*

「…………これ、姉貴のだけど。」


あんまり平沢さんの濡れた姿を見ないようにしながら、姉貴のジャージを指差した。



「そんな…悪いから…」



いや…俺のために早く着替えてほしいんだけど…



「あの…私、大丈夫だから、気にしないで…?」



だからね、
俺が大丈夫じゃないんだ…



「…………でも、」


「……?」


「………濡れてる。」



そう言って平沢さんの制服を見つめて、やっぱり何かいけないことをしているような気持ちになってすぐに目線をずらした。



「けど、お姉さんに悪いし…何も言ってないのに勝手に着るのは…」


「…………大丈夫。姉貴優しいから。」



これは本当だ。
兄貴も姉貴も、俺に甘いから、多分こんなことで怒らない。


じゃあ、と言い残して俺は自分の部屋に戻った。


心臓は相変わらずで、少し苦しい。



取り敢えず、落ち着こう…


そう思って窓を見たら、もう雨は上がっていて夕日の光が入り込んできていた。


もう晴れてしまった…
ということは、平沢さんはすぐに…帰るよな…

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