寡黙男子
第3章 二歩目を探る *亜紀乃の世界*
「あっ、待ってっ…手、繋いだかも!」
この前、急に雨が降ってきたときのことを思い起こして、救いを得たような気持ちになる。
けど───
はっきり言ってあれは手首を掴まれただけであって、“手を繋いだ”なんていう事実からはかけ離れている…かもしれない…
「ごめん…やっぱり繋いでない…」
泣きそうになる私に奈央がまあまあと背中を撫でてきた。
学は…私には触れたいとか、そういうことは思わないのかな…。
うん、思わなそう…だよなぁ。
「まぁ、高橋くんってなんか欲とか多分ない方なんだよ!だから、あんまり気にしなくても…ね?」
「……でも、この前奈央、『男はみんな獣だっ!オオカミだっ!』って言ってたじゃん!」
慰めているつもりなんだろうけど。
フォローされればされるほど、傷はえぐられていくばかりな訳でして──