寡黙男子
第3章 二歩目を探る *亜紀乃の世界*
真っ暗な靴箱で、どちらとも何も言わずに、ただ手だけを握っていた。
朝と同じように、学からは微かに制汗剤の香りがして…
「あの…どうしてここにいるの?」
やっと発した言葉がこれってどうなの?
でもね、
こんなにドキドキしてる中で言葉を発することが出来ただけ、すごいと思うの。
「…………忘れ物…取りに…」
「そう…なんだ…」
また変な沈黙。
こんな事を話したいんじゃないのに…。
なんか手汗かいてきちゃった…
学、気持ち悪くないかな…?
「………取りに行ってくる」
「あっ…うんっ…」
変だな…
手を繋いでいるだけなのに…
たまらなく心臓が鳴っていて…
たまらなく幸せで…
あっ…
ゆっくりと…解けて行く手が…
たまらなく寂しくて───