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息もできない

第14章 喜んで欲しいんです

なんとなく、その場のノリで買ったのはいいものの、結局こんなの喜んでくれないんじゃないかーとかすごく不安になってまた考えて

あ……そういえば春陽ってお酒好きなのかな
カフェでお酒勧められた時もなんかうんちく?的なのを語ってたしな

って思いついてお酒を見に行った


「すみません」
「はい、何か御用ですか?」
「友人の誕生日プレゼントにお酒を送ろうかと思っているんですが、何かお勧めはありますか?」


お店で働いていたのは髪をオールバックにした黒髪の男性で、凛々しい顔つきがすごくお店の雰囲気と合っていてかっこよかった

贈る相手の年齢とかを話して、ワインを一本持ってきてくれた

「そうですね…こちらはいかがでしょうか?」

そのワインのラベルには春陽の生まれ年が印字されていた

「生まれ年のワインですか。素敵ですね」

「えぇ、それにこちらはーーー」

それからそのワインの素晴らしさについて語られたんだけど、お酒についてはさっぱりわからない俺は

「へぇ…」「なるほど」

とか適当な相槌を打ってやり過ごした

一緒に飲める方がいいかな、と思っていたのでテイスティングもさせてもらって
美味しかったそのワインを購入した

最後に

「本日はご購入ありがとうございました。また何かあれば是非当店にいらして下さい」

と言って名刺を渡された
その店員さんの名前『黒澤 朗(クロサワ アキラ)』を確認して

俺はワインを買えて嬉しかったからそれまでいつもの無表情だったのを崩して微笑みながら

「こちらこそありがとうございました。またよろしくお願いします、黒澤さん」

と言ってその店を後にした

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