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息もできない

第18章 悪いのは誰なのか

「なーー」


春陽が、多分俺の名前を呼ぼうとして声を出した、その直後


「お客様、いかがでしょうかー?」


とカーテンの外から声がした

「「!!!」」


これには俺も春陽もびっくり
とっさに強く抱き合った


忘れてた!
ここ、外だった…!!!
ていうかどうしよう


春陽に助けを求めるように見上げるとまた唇に人差し指を当てて静かに、と言われる
すすすーっとカーテンから離れたところに寄って、耳元で小さい声で春陽が耳元に囁いた


「店員さんに、まだ着替えおわってないですって言って?」
「え…と…」
「早く」
「ぅ、ん………すいません!まだ着替えおわってなくて…」
「そうでしたか、失礼いたしました。サイズなどはいかがでしょうか?」
「ぁ、えと…大丈夫で、した?」


春陽が近くにいるからかいつものクールな感じを装えないし、最後はアドリブだったから疑問形になっちゃった
でも春陽は合格って俺の頭を撫でる


俺は急いで着替えた
試着室の前から店員さんが立ち去ったのを確認して、さらに周りを見回して人がいないか確認して


「大丈夫!春陽、行こ」


こそこそっと出て来るその感じが、なんだかすごく楽しい

春陽が靴を履いてから俺に寄ってきた


「店、出よ?」
「服は?」
「すぐ買ってくる。待ってて」
「うん」


春陽はさっき持っていた服を結局試着しないで買いに行ってしまった

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