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息もできない

第21章 そろそろ泣きたいのですが

夜になって圭太から連絡が来た


『出身地わかったぞ!』


メール本文の下には都道府県名と知らない市町村名


ここが大崎さんの出身地…
俺の家の最寄り駅からだと電車で3時間くらいかな?


大崎さんは結構遠い所から来ていたらしい


思い立ったが吉日だよな
次の休日に行こう


俺は会社から帰る準備をしながら考えていた


会社からの帰りは春陽のお店に寄るのがこの前までの定番で、脚が自然と春陽の店に向かっていることに気がついて俺は急いで方向を変えて歩き出した


意味もなく家に帰りたくなくなって、光に塗れた都会の街を一人でぷらぷらと歩く


そうして見えて来たのはいつか見たバー


ここ…春陽が一度告白してくれた所だ


俺が春陽の家の鍵を持ったまま出社しちゃって、それを渡しに来たんだっけ


記憶を辿ってみると懐かしくなってふらりと入店していた


「いらっしゃいませ」


と低音の声が響くいい雰囲気のバーは多くの席が埋まっていた


飲み物を適当に注文して席につくと何人かが話す声が聞こえてくる

だけどそれは囁くような声ばかりで、ほとんど内容までは聞き取れない


スーツで一人呑んでいるなんて目に付くのか数人の女の人に声をかけられたりもしたけどことごとく断った

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