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息もできない

第5章 誰もいない朝

昼休みも珈琲を飲んだだけで本当に休みもなく働き、田中さんにも褒められるほど仕事をはやく終わらせて定時に上がらせてもらえた

良かった…!
これで店長さんに会わなくても鍵戻せそう

ずっとパソコンに向かってたから目が疲れたなー

なんて考えながら会社のロビーを出口に向かって歩いていると、ロビーの少しひらけたところに私服で立つ男性がいた

誰もがスーツで歩き回っている中その人は少し浮いて見えたが、何よりも浮いて見えるのは服装のせいなどではなくその人の長身と綺麗な顔のせいだった


なんで
ここに店長さんがいるの

今お店やってるはずじゃ?

頭が混乱して状況について行けず
時間を要して俺の頭が出した答えは

店長さんもしかして俺が鍵持ってっちゃったからすげー怒ってお店休んで待ち伏せしてまで俺のこと怒りにきたのか?

サァーッと血の気が引くのがわかる
なんでか倒れそうなほど足元がふらつく

店長さんから20メートルぐらい離れたところでつったっていると周りを見渡すように視線を動かした店長さんに見つかった

や、ばい

人に怒られるのとか苦手で
どうしたらいいかわからなくて
一歩も動けない

すると俺の前まで来た店長さんが
俺の頭に大きな手をぽんっと乗せて一言

「良かった。今日ちゃんと会社行ってたんだな」
「ふぇ…」

人が大勢いるなかで間抜けな声が出たとわかってはいるけど、あまりにも拍子抜けな店長さんの態度にそんなこと気にならなくなった

「これから時間ある?」
「え、と」
「昨日の話の続き、しよ」

そう言われれば嘘をつくわけにもいかないし、気になってもいたので俺は店長さんについて行くことにした

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