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息もできない

第25章 息もできない

車の中で少しうとうとしていると、春陽に「寝ててもいいよ」と言われたので、俺はその言葉に甘えて眠りについた



「なー…………お、なお……直、起きて」
「…………ん……?」


暗闇の中に響いた春陽の声でゆっくりと覚醒する
靄のかかったような意識が少しずつはっきりしてくると、それを待っていてくれた春陽が「着いたよ」と微笑んだ


欠伸をしていると車を出て助手席側に回った春陽がドアを開けてくれる

大人しくどこかの駐車場にとめられた車から出ると


わぁっ……
綺麗


目の前に広がったのは大海原に沈む太陽だった

一気に目が覚めた俺は春陽を見た


「綺麗だねっ!」
「だね」


俺の反応に満足したのか微笑みを深めた春陽に俺もテンションが上がる


「これを見せてくれるためにここに来たの?」


俺が駐車場の端まで小走りで寄って手すりにもたれかかつていると春陽が追いついてくる


「いいでしょ?ここ」
「うん。すごい」


普段動いてるかどうかなんてわからない太陽は沈む時は早くて、みるみるうちに遠くの海に飲み込まれてしまう

俺たちはただ無言でその光景を眺めていた

陽が完全に沈みきると春陽が俺の肩にするりと腕を回す

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