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息もできない

第25章 息もできない

俺は春陽の手を少しだけ強く握った


「だから、1人しかいなかった信じてた人に裏切られた時、側にいてくれて本当に助かった。救われた」


俺は一度言葉を止めてからゆっくりと


「ありがとう」


と言った

これまでの春陽がしてくれたこと全部に、ありがとう

昔のこと思い出していたからか、視界が少し涙で揺れた


なんか、ほんとに
色々あったんだなぁ


それまで横に並ぶように立っていたんだけど、無性に春陽に抱き締めてもらいたくなって俺は春陽の前面に回る

そのままぎゅ、と抱き付くと、すぐに春陽の腕が俺の背中に回された


「俺こそ、ありがとう、直」


そのありがとうに何が込められていたのか知りたくて春陽を見上げると、軽くキスを落とされる


「直がいなかったら、俺は自分の過去から解放されることなんてなかった。直がいてくれたからようやく解放されたんだ。ありがとう」


俺は春陽が千尋さんのことを言ったことに嫉妬してそこを清めるように自分から春陽の唇を奪った


「今度は千尋さんとの過去にじゃなくて、俺に束縛されるのに?」


唇を離して俺が聞くと、春陽は愛しいものを見る目で笑う

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