息もできない
第26章 番外編「St. Valentine's Day 」
「直……っ」
心配で追いかけると中から鍵を閉めた音
俺はドアに近づいて静かに声をかけた
「直……ごめん……」
しゅん、と頭を垂れると部屋の中から僅かに聞こえてくる
物音?
声?
いや違う
泣き声、だ
俺は勢いよく扉を叩いた
「直!開けて!開けろ!いくらでも俺のこと責めてもいいから1人で泣いたりしないで。ちゃんと話そう?直!」
俺が半分叫んでいるように訴えかけると鍵を開ける小さな音がした
勢いよく扉を開けると、目に涙を浮かべた直が所在無さげに立っていた
「ごめん」
俺は直を強く抱きしめる
すると背中に回った直の手が俺のシャツを強く掴んだ
「ふ、ぅええ……」
「直……」
「嫌だぁ。春陽、他の人のところ行っちゃやぁ……」
泣きながら放たれた言葉に不謹慎だけど顔が緩みそうになってしまった
そんなこと心配してたのか
可愛いな、もう
「何言ってるの、直。俺が直から離れるわけないでしょ」
俺が直の額にキスをしながら言うと直の顔は安心したのか少しだけゆるんだ
その顔の可愛いこと可愛いこと
まったく
俺の方が百倍心配なんだけどな
とりあえず、早急に直の機嫌の取り方を考えなくちゃ
女の子に負けじと作った俺からのチョコレート受け取ってもらえなかったら今度は俺が泣いちゃうからさ