片想いの行方
第13章 好きでいてもいいですか?
その後、10mほどの小さなプールの中で、あたしと陽菜ちゃん2人だけの水泳教室が始まった。
「いい? まずは深く深呼吸。
ゆっくりでいいから、自分のタイミングで大丈夫だと思ったら、大きく息を吸って、水の中に潜ってみて」
蓮くんは、穏やかな口調で話した。
「怖がらなくていいんだよ。
焦る必要もない。
潜ったらゆっくりと目を開いて、プールの水が揺れるのを見てごらん」
蓮くんの言葉は、まるで何かの音色のように、あたしの心に優しく響いた。
心が落ち着くと、簡単に水の中に潜れる。
外からの光でゆらゆらときらめいて、あたしは初めて水が綺麗だと感じた。
途中から苦しくなって水面の外に出ると、浮かびあがった先に蓮くんの笑顔があるから。
気付いたら、恐怖感は全く無くなっていた。