片想いの行方
第18章 彼女の正体
そのカフェは2階建てになっていて、あたし達は階段を登った。
『ごめんね。 私、エアコンが苦手なの』
優香さんはそう言うと、誰も座っていないテラス席へと進んだ。
それでも、すぐ近くにある大きな木が影を作っているから、思ったほど暑さは感じなかった。
「私はホットコーヒーを。
美和ちゃんはアイスコーヒーにする?」
「いえ、あたしは……苦いの飲めないので…」
「ふふっ。 そうなんだ。 姫宮くんと同じだね」
「…!」
ヒメの名前が出て、あたしは優香さんを見る。
「コーヒーにも、アイスティーにも、ヒメは必ず砂糖を入れるよね。
デートの時もいつも店員さんが間違えて、甘い物を私の方に置くから笑っちゃう」
「…………!」
優香さんは思い出すようにクスクスと笑っている。
その胸元で、ターコイズのネックレスが揺れていた。