片想いの行方
第25章 動き始めた感情
「………………!」
「…なんか、思い当たることでもあるの?」
新藤さんはいつもの優しい表情で、俺を見る。
高校の時、都大会で優勝したこともある新藤さんは、俺の4つ年上の大学生で。
穏やかで落ち着いた彼には、水泳だけじゃなく、色んな事を相談している。
俺をよく理解し、悩みを聞いてくれる良い先輩だ。
……だけど
「………いえ………何もないです」
今回の事は……
新藤さんにも言うことができなかった。
「まぁいいけどさ。
あまり追い詰めて考えるなよ?
コーチも今のお前がスランプだって状態を見抜いたから、休めって言ったんだ。
命令なんだから従った方がいいよ」
「……はい…」
新藤さんは笑うと、バイクに乗って先に走り去っていった。