片想いの行方
第25章 動き始めた感情
「……スランプか……」
俺は自転車を押しながら、夜道を歩き出した。
8月の最終日、あの1番暑い夏の日に…
自転車の後ろに、香月を乗せて走ったのを思い出す。
『蓮くんと一緒に水の中に入ったような感覚だった』
『すごくキレイで幻想的な……別世界にいるみたいだったの……』
風の音と一緒に後ろから聞こえた、香月の言葉。
そのあと、自分の発言に照れたのか、すぐに話題を切り替えようとしてたけど
……俺はその時……
心が震えるほど感動していた。
自分が泳いでる時に感じていた世界観を
水泳が苦手で、ようやく泳げるようになったばかりの香月が
俺を見て同じように想ってくれた事に………
なんだか無償に胸が熱くなっていた。