片想いの行方
第31章 片方のピアス
「……………」
優香の大きな目が、俺を真っ直ぐ見つめる。
そして
「…………っ」
優香が俺の顔を引き寄せ、唇が重なった。
首に回された細い腕と、風に吹かれて揺れる髪から
ローズの香りが広がる。
「………ん………」
優香の吐息と、深く絡む舌を受け入れながら
この場所でキスをした時の、美和の顔が頭に浮かんだ。
俺にも幸せになってほしいと、震える声を絞り出して
花火を見ながら涙を流した美和を
あの日から、どうしても忘れる事が出来ない。
「………っ……」
脳裏から消そうとして、優香の腰を無理矢理引き寄せようとすると
優香はそっと俺の胸に手を当てて、体を離した。