片想いの行方
第42章 もうひとつの世界
「……アンナ……
……元気かな………」
フォークを握る手が震えていることに、気付かないふりをして
私は小さく呟いた。
目を開けてしまったら、また現実に戻ってしまうから
もう少しだけ、この世界にい続けたくて
私は独り言を繰り返した。
「………蓮くん……
今何してるかな………」
私の名前を呼んで、笑顔で手を振る彼の姿が浮かぶ。
「…………っ
どこにいるのかな………」
もう一人の彼を、思い浮かべようとしたけど
目を閉じていられないほどの、涙が溢れてしまって
私は手で顔を覆った。