片想いの行方
第45章 あの頃とは違う
仕事を始めても、私の頭の中はヒメでいっぱいだった。
……倒れた私を助けてくれたんだ……
それなのに、ちゃんとお礼もしないままあの場から出ていってしまった。
私の目が覚めるまで、ずっと傍にいてくれて
左手を握ってくれていた………
「………………っ」
どうしよう………
なんなの、この気持ち………
社会人になったヒメが、今までどんな風に過ごしていたのか
なぜうちの会社に入ったのか
……今はどこで誰と一緒なのかも、わからない。
だけど
5年ぶりなのに、そんなに月日が経ってることも忘れてしまうくらい
私の胸は、あの頃と同じように高鳴っていた。
デザイナーやプランナーがいるひとつ上のフロアには、滅多に行く機会が無いけれど
奈々さんに言われた通り、きちんとありがとうって言いに行かなきゃ。
そんな思いをぐるぐると繰り返しながら、私は夜になるまで仕事をこなしていった。