片想いの行方
第46章 朝の7時と、夜の9時
「……………………」
彼は何も言わずに、玄関の扉に寄り掛かり腕を組んで私を見つめる。
………見つめるというよりは、睨みつけていると言った方が正しい。
「……どうしたんですか?
そんな立ったままだと、お体に……」
「1時間13分40秒」
私の言葉を遮り、彼が低い声で呟く。
「…………っ」
「君が昨日、ここに来るまでに遅れた時間だ。
その失態を、今日挽回しようと思わなかったのか?」
………私は彼の目の前に立つと、食材のビニール袋を持つ手に、きゅっと力を入れる。
「……ご存じだと思いますけど、今繁忙期で……
夜の8時前に会社を出るのは、無理なんです」
「そんなの君の力量が足りないからだろ。
無駄な仕事は奈々にでも押し付けておけばいい。
君が1番に考えなくてはいけないのは何だ?」
一条さんの言葉に、私は俯いたまま返事をする。
「………あなたです」