片想いの行方
第48章 2人の夜
バーテンダーではなく、このジャズバーのボーカルだったという衝撃な事実で
しばらくの間は、その音楽を聞き入る余裕もなかったけど
周りのお客さんや、聞いている店員さん達が、どこか楽しそうで、だんだんと朗らかな笑顔になっていくのに気付いた。
「…………?」
私は、その曲に耳を澄ます。
思わず口ずさみたくなるような、軽快なナンバー。
…………この曲…………
「……………っ」
胸から熱い想いがこみあがってくる。
ジャズにアレンジされて、きっとアドリブで奏でられているから、最初は分からなかった。
だけど
ヒメが微笑みながら英語の歌詞に変えて唄うその曲は
紛れもなく、私が高校までスキップしながら口ずさんでいた………
あの頃に流行った応援ソングだった。